子宝祈願 ー男が綴る不妊治療ー
自分が子宝祈願に行くなんて、思ってもみなかった。
それは秋のことだった。
夫「今週末天気がいいからパワースポットに行かない?子宝祈願もできるらしいよ」
妻「え♪いいね!行こう行こう!!」
1時間かけて行ったその神社はとても広く緑に囲まれたとても気持ちがいい所だった。
1-2時間ごとにご祈祷の時間が設定されており、我々は到着してから申し込みをした。ご祈祷料金は2000円~となっていた。子宝だけでなく自分の願い事を祈るための特別法要で、私たち以外にも十数名の人が待っていた。ご祈祷が行われるのは本堂で、普段見ることができない部屋に通され、お祈りをして、御札と御守りを頂いた。
このお参りを通して、二人の気持ちを一つとして、治療に向き合っていく覚悟を決めた。
という思い出であればよかったかもしれない。
実際は、、
妻に、友人が行ったという子宝で有名な神社に行こうと言われたが、
「えー、めんどくせー、そんなん行っても意味ないっしょ」
神様よりも不妊治療という科学を信じたい私は、そう言ってただ妻を怒らせた。
まだ、自分が「不妊」という事実を受け入れられず、目を背けたかっただけだったかもしれない。子宝祈願に行くということが「不妊」、「自分がダメなオトコであること」を認めることになりそうで。
いやいやながら行った神社は良い所でした。
ただただ浅はかでした。
まずは現状を認識し、その事実と向き合い、そして妻と向き合うことが必要だった。不妊はどちらか一人の問題ではなくて、二人の問題である。どちらかの検査結果がよかろうがダメであろうが、二人の問題なのである。そんな事は頭で分かっていても心が受け入れるには時間がかかる。悩んでいる、というのとも少し違う、この素直に従えない気持ち。まぁ、イベントとして子宝祈願も悪くない、そんな余裕を持てればよかった。
不妊治療に向き合う男性の声は女性に比べるとあまり外に出てこないが、不妊に向き合った男性たちの本もある。同じような状況にいる人が他にもいることを知れば楽になるかもしれない。